調べ方を学ぼう―シリーズ【アクティブ・ラーニングから探究的な学習へ】13

調べ方を学ぼう―シリーズ【アクティブ・ラーニングから探究的な学習へ】13

*本連載は、がもうりょうた氏の『「探究」カリキュラム・デザインブック』(ヴィッセン出版)、『探究実践ガイドブック』(七猫社)を再編したものです。『「探究」カリキュラム・デザインブック』に関してはヴィッセン出版より掲載の許可を得ております。ページの下に両著作をお求めやすい特別価格で販売する七猫社の​会員限定ショップへのご案内があります

(1)データベースを使う

調べ学習の基本は「調べること」です。調べるべきテーマを決めたら、さっそく、調査を始めます。

調べ学習を充実させるさまざまなチャンネルが存在します。調べ学習というと、たいてい、「図書館で調べなさい、インターネットで検索しなさい」と指示を出せば事足りると考えがちです。しかし、図書館やインターネットを利用するにしても、どこのデータベースを、どのように利用するのか、その調べ方を知っていないとやみくもに調査して無駄な労力を使ってしまいます。授業時間を使うにせよ、放課後を使った宿題とするにせよ、学習者にとってタイムロスのない方法で的確に情報へアクセスできることが重要になるでしょう。

インターネット上で公開されているオンライン・データベースは時間・空間を問わない手軽な調べ学習のインフラになります。データベースを使って、調べたい語句を検索し、関係しそうな論文や書籍を探せば、何を読むべきか、調べるべきかが、理解できるでしょう。

(2)論文を読む際は

論文を読んでいてわからない言葉があれば、それを解説している記事やウェブサイトを参考にするとよいでしょう。この点を少し解説しておきましょう。

中学生や高校生が科学論文を読んでその内容を理解できるのかという、それは難しい部分があります。

時には、指導する教師が論文の内容を噛み砕いて解説しないといけないこともあります。その作業はかぎられたテーマについて、というよりも、その問題系全体を見渡せる理解を生徒に与えることにつながります。研究したいテーマについての全体像をつかむわけです。

さて、このプロセスを生徒自身にしてもらうにはどうすればよいでしょうか。えてして研究論文のテーマになっている内容については一般読者向けの科学誌等で解説が行われます。「ニュートン」や「ナショナルジオグラフィック」のような本です。

一方で文系探究となると、新書本がそのテーマについてまとめていることがあります(研究のスピードとしては理系よりもゆったりしているので10 年以内の研究動向なら書籍でも十分に間に合うでしょう)。テーマがかぎられたものであったり、最新のものであったりすると、各学術誌に掲載されている「研究動向」や「展望」論文を参考にするとよいでしょう。

(3) 信頼性のあるソースとは

図書館やインターネット上に散見されるさまざまな情報には、時にとんでもない間違いを含んだものがあります。信頼できる情報ソースの見つけ方とはどのようなものでしょうか。基本的なポイントをまとめましょう。

①文責が明確であるか…その文章の責任を誰が取るのかを点検します。書籍であるなら著者はもちろん出版社の責任も問われます。論文であるなら著者やそれを掲載許可した雑誌の編集委員会の責任が問われるでしょう。インターネットの情報もそれを誰が書いたものか、どの機関が掲載しているものか、明確にされているか確認しましょう。

②文責者は信頼できる人物・機関か…情報の責任が明確になったら、その責任者=文責者は信頼できるかどうかを考えます。たとえば、自分の所属と経歴を明確にし、その経歴が信じるに足ると確認できる人物か。所在地や履歴が不明なインターネットのニュースサイト等も気をつけないといけないでしょう。

③書いていることは正しいか…信頼できる経歴の著者・機関でも時に誤った情報を流すことがあります。とくに自分の専門ではない分野について言及したり、論争的な内容について自説が正しいように見せるため事実を歪めることもあります。これらの場合、情報の一次資料に遡ったり(言及されている内容に関する実験や検証)、他の情報ソースを点検したりする等のダブルチェック、トリプルチェックが重要になります。

(4)Wikipedia( ウィキペディア) の使い方

オンライン百科事典である「ウィキペディア」が充実した内容になってきています。多くの学校でも、ウィキペディアを活用する場面があるでしょう。ただ、このオンライン百科事典は先に示したような信頼性のある情報ソースとはいえない点があります。

ウィキペディアは誰でもいつでも編集できるものであり、相互レビューとして信頼性を担保しているものの、その文章に対する責任を誰が取るのかは不明瞭です。つまり、「文責」が明確ではありません(公式には文責はウィキペディアン、つまり、利用者全体にあるとしています)。

では、ウィキペディアを読むことさえだめなのかというと、そうではありません。むしろ、大まかな知識を得るためには活用してもよいでしょう。

ウィキペディアのウェブページの下部にそれぞれの記述の情報ソースが明示されています。ウィキペディアで項目を調べたらこの情報ソースをチェックし、本当にそのような事実があるのかを確認します。

ウィキペディアはこのように適切な情報ソースやさまざまな情報を集めるためのポータルサイトの役割をもっています。直接は引用できないものの、引用する価値のある情報を探すのには役に立つのです。

さらにこのウィキペディア、日本語版の充実もさることながら、もっとも充実している英語版にアクセスすることも大変価値あるものになるでしょう。探究成果を充実させるためにも重要なヒントとなるでしょう。

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