*本連載は、がもうりょうた氏の『「探究」カリキュラム・デザインブック』(ヴィッセン出版)、『探究実践ガイドブック』(七猫社)を再編したものです。『「探究」カリキュラム・デザインブック』に関してはヴィッセン出版より掲載の許可を得ております。ページの下に両著作をお求めやすい特別価格で販売する七猫社の会員限定ショップへのご案内があります
(1)スライド式ポスターを作ってみよう
実際に調べ学習の発表用ポスターを作ってみましょう。今回は指導がしやすいスライド式ポスターの作り方を示します。
まず、ポスターの基本枚数です。今回はA0 版ポスター(840 × 1189mm)を基本としてサイズを考えるのでA4 スライド(210 × 297mm)が16 枚程度となります。
16 枚のスライド式ポスターなら一般的な校外の発表会でもスペース的に掲示可能です(基本スペースはA0 版ポスター1 枚分となっていることが多いため)。
スライドの1 枚目は発表タイトルと学習者の氏名、ないしは班名を書きます。また、引用参考文献をまとめて記載する場合はポスター最終16 枚目にまとめて書きます。2枚目にはどのようなテーマを、どうして調べることになったのか。「テーマと動機」のようなタイトルで書くとよいでしょう。こうなると実際に使用可能なスライドは13 枚です。最後に14 枚・15 枚目を「考察」に当てるなら、自分たちの調べてきた内容は11 枚程度にまとめる必要があります。
(2)ポスター作りの手順
学習者は情報整理ポスターを参考に、集めてきた情報をスライドに転写します。原則として1 枚のスライドに1 つの情報をまとめます。たとえば、ある国の宗教人口について解説したいなら、人口内訳グラフを1 枚のスライドにコピーします。そして、そこから読み取れることをグラフの下に書き込みます。宗教人口と民族人口を比較させる狙いがあるなら、2 つのグラフを1 枚のスライドにコピーします。そして、2 つのグラフの比較から読み取れることをスライドの下に書き込みます。
このように、1 つの主題(読み取れること)に対して、根拠となる情報をスライドに配置します。これがスライド構成の基本です。1 枚のスライドには1 つの主張、というのが基本です。
考察を提示する場合は箇条書きとして文章を書き込むことがあります。この際、重要な文言は色を変えたり、下線を引っ張ったりして強調します。この強調部分はそこを読むだけで何を言いたいのかわかる表現にしましょう。
(3)スライドの作り方
①スライドの文字数と文字の大きさ
スライドの適切な文字数は状況によって変わります。また、表現や文体の好みによっても変わります。ここでは1 枚のスライドで100 文字程度を理想とします。その場合、文字の大きさは35 ポイント前後が読みやすいでしょう。
指導のうえでは基本的にはたくさん書き込むことを強調するとよいです。だいたい、200 ~ 300 文字くらいでしょうか。要約は重要なところを残す作業ですから足していくよりは比較的簡単な作業です。そのため、最初は理想の文字数より多く書き込むように指導します。
②出典の書き方
次のポイントは出典の書き方です。出典の書き方は研究分野によって異なっており、必ずしもこれが決定版だというものはありません。
たとえば、本文中に文献情報は書かずに番号だけ入れ、注釈に書籍情報を書き込むこともあれば(例:~ということがわかっている(1))、文中に著者名と発行年を書き込み、文末に文献リストのみを掲載する場合(例:七猫(2016)によると~)もあります。このように手法はさまざまあるのですが、共通しているのは書籍情報にはどのようなものが含まれているのか、オンラインの情報はどのように示すべきなのかという基本的な事項です。この基本事項を明記してあれば、出典表記の仕方はある程度自由が認められると考えられます。
出典の書き方の例
1.書籍の場合
著者名(出版年)『タイトル』出版社名
例:七猫七子(2018)『探究的な学習のすべて――理論と実践』七猫新社
2.論文の場合
著者名(出版年)「論文名」『雑誌名』(巻号)収録ページ
例:七猫七夫「ネコ科のDNA解析の手法」『ネコ研究』(12)pp.12-24
3.インターネットの場合
親サイトの名称(作成機関や作成者名)(URL)内 HPタイトル(URL)最終閲覧日:****年**月**日
例:日本ネコ学会(http://www.japan_cats.co.jp/)内 ネコの正しい飼い方(http://www.japan_cats.co.jp/cats_shiiku.html)最終閲覧日:2018年3月31日
(4)タイトルの付け方
調べ学習の段階では、タイトルに関してはそれほど多くの制約をかける必要はありません。ただ、一体何の調べ学習であるのか、わかるように、テーマが主題か副題に入るように指導しましょう。探究の段階が進むにつれタイトルに含むべき内容は、ある程度決まります。