情報を整理しよう―シリーズ【アクティブ・ラーニングから探究的な学習へ】15

情報を整理しよう―シリーズ【アクティブ・ラーニングから探究的な学習へ】15

*本連載は、がもうりょうた氏の『「探究」カリキュラム・デザインブック』(ヴィッセン出版)、『探究実践ガイドブック』(七猫社)を再編したものです。『「探究」カリキュラム・デザインブック』に関してはヴィッセン出版より掲載の許可を得ております。ページの下に両著作をお求めやすい特別価格で販売する七猫社の​会員限定ショップへのご案内があります

(1)ストーリー作り-「包括的なもの」から「個別的なもの」へ

学習者はあるテーマのもとにさまざまな情報を集めてきます。しかし、これだけだと単なる情報の寄せ集めでしかありません。これをどう料理するのかが次の段階となります。

調べ学習では2 種類の知識を理解しておくとよいでしょう。1 つは「包括的な知識」であり、ある対象についての全体像を理解するために必要な知識です。もう1つは「個別的な知識」で、これはある対象について細部を理解するために必要な知識となります。

たとえば、太陽系の惑星をテーマにした調べ学習では、

・包括的な知識……惑星や太陽系の定義、太陽系内惑星の名称、距離や影響関係

・個別的な知識……個々の惑星の大きさや密度、気温等

調べ学習では「包括的な知識」からテーマに関する全体的な理解を促し、次に個々の要素に関する「個別的な知識」を学ぶ作業へと移っていきます。当然ながら両者の情報収集は往還的なものになるのですが(包括的な知識を調べた後で個別的な知識を調べ、さらに包括的な知識を調べる……)、少なくとも最初のとっかかりは大きなところから始めること。これが個々の情報を理解するためにはやりやすい方法となるのです。

「包括的な知識」から「個別的な知識」というプロセスは調べ学習の発表のストーリーラインでもあります。まずはあるテーマについての包括的な知識を聴き手に語り、さらに学習者が選択するトピックに関する個々の知識を説明する。

たとえば、学習者が調べ学習の成果を発表するとき、次のように進めます。

「私は太陽系の惑星について調べました。そもそも惑星とは……。太陽系とは……。太陽系の惑星とは……」と包括的な知識を示し、次に「私がそのなかでとくに興味をもったのは火星です。火星の大きさは……。密度は……」というふうに個別の知識へと展開していくのです。

「包括的な知識」から「個別的な知識」へ。このストーリーに従って情報を整理するとき、そこに「1つのストーリー」が見えてきます。このストーリーが1 章で示した「知識と体験のネットワーク」であり、ある対象についての「理解」と考えられます。

個々の情報を1 つのストーリーにする力、言うなれば「物語る力」こそが、調べ学習ないしは探究に必要な1 つの能力になるのです。このような能力の獲得を探究において促すにはどうすればよいのでしょうか。

(2)情報整理ポスターを作ろう

先に紹介した情報の見える化とストーリー作りは密接にリンクしています。個々の情報を整理しストーリーを作るための方法として情報整理ポスターを作成しましょう。

情報整理ポスターの作り方

①カードを机に並べる…情報カードを机の上に並べます。机の大きさはすべてのカードを一望できる程度の広さです。

②類似したカードの整理…それぞれのカードを見渡して、類似したもの同士を重ねていきます。

③カードの見出し作り…重なったカードはその上にカードと同じサイズの紙を置き、類似したカードの情報を統合させた文章を書き加えていきます。

④カードのグループ分け…カード同士の関係性を考えます。たとえば、このカードとこのカードでは書かれていることが反対である、このカードは包括的な知識を書いているけれど、これは個別的な知識である、このカード同士は似たような内容を書いているから同じグループである、等です。

⑤カードの配置…カード同士の関係性が見えてきたら、机の上に模造紙を置きます。模造紙の上に改めてカードを配置します。このとき、模造紙上部は空けておきます。基本的には「包括的な知識」は上に、「個別的な知識」は下に、対立し合うものや並列関係のものは横に並べる等、わかりやすく整理します。

⑥関係性の明示…カラーペンを配り、グループごとにまるで囲んだり、対立関係を書いたり、並列関係を示したりします。原因と結果のような関係性等も書き加えます。

⑦情報整理ポスターの作成…カードを模造紙に貼り付けていきます。模造紙上部の空けていた部分に自分たちの名前やグループ名、可能ならポスターのタイトルを書きます。

⑧ミニ発表会…こうしてできあがった情報整理ポスターをもとにクラス内でミニ発表会を行います。上から情報を読み上げ、それぞれの関係性を語る作業を通して、学習者のなかにストーリーができあがるのを促していきます。

※この方法は川喜田二郎のKJ 法(1967 年、『発想法-創造性開発のために』、中公新書)を参考にしている

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