情報を可視化しよう―シリーズ【アクティブ・ラーニングから探究的な学習へ】14

情報を可視化しよう―シリーズ【アクティブ・ラーニングから探究的な学習へ】14

*本連載は、がもうりょうた氏の『「探究」カリキュラム・デザインブック』(ヴィッセン出版)、『探究実践ガイドブック』(七猫社)を再編したものです。『「探究」カリキュラム・デザインブック』に関してはヴィッセン出版より掲載の許可を得ております。ページの下に両著作をお求めやすい特別価格で販売する七猫社の​会員限定ショップへのご案内があります

(1)調べたことは「書きとめ」よう

調べ学習を進めていると学習者にさまざまな問題が出てきます。たとえば、自分の調べた情報がどこのウェブサイトをソースとしていたのか、わからなくなってしまうこと、あるいは自分がそう思っていたのだけれど情報ソースをよく見るとそのように書いていなかったということ等が起こります。

このようなことを避けるためには1つひとつ調べてきたことをメモとして書きとめ、それがどこに記されたどのような情報であるのか、明記しておく必要があります。パソコンやスマートフォンを使った調査では、メモ帳やテキストソフトで情報管理を行うことになります。

しかし、探究初心者やグループで学習を行う場合にはデジタル上だけでなく、紙ベースの情報管理を行うと指導や情報共有がしやすくなります。

「あるテーマのもと、それぞれが別の角度から調べ学習を行う。それを後日、全員で持ち寄り、すり合わせていく」というグループ学習を考えてみましょう。

年齢の低い学習者は相手が自分と同じ前提条件(知識)を持っていないことを意識できないことがあります。つまり、自分が知っていることを相手も知っていると思って話すため、話の内容が理解されない状況が起こるのです。

その際、調べてきた情報をプリントアウトしておけば、1つひとつ、みんなの前で指し示しながら説明・吟味ができます。情報共有を通して、不足する知識を検討し、グループのなかで調べてきたことをより効率的に共有することができるのです。この際、教師がその場にいれば、プリントアウトされたさまざまな情報について、その信頼性や成否、解釈について指導することが簡単にできます。

これがいわゆる「可視化=見える化」の効果です。

(2)「見える化」は探究で重要な方法

このような情報の「可視化=見える化」は大学等での研究・調査でも重要な役割を果たしています。たとえば、人類学や社会学のフィールドワークでは、現地で得られた情報をフィールドノートに記録します。フィールドノートには日付や場所、情報を提供してくれた人物の名前やその情報が簡単に箇条書きされ、基礎的な資料として利用されるのです。

最近では、インタビューについても録音し、「トランススクリプト」として文字起こしをすることが一般的です。これにより、インタビューで問われ語られている内容について、事実に基づいて精密に分析できます。聴き取りメモだけだと、その時々のニュアンスが抜け落ち、相手の真意とは違う解釈になる場合もあります。

多くの理系の研究においても研究ノートが活用されます。これはどの研究者が最初にその技術を開発し、事実を突き止めたのかを明確にする効果をもちます。特許出願の際、研究ノートは重要視されるのです。また、近年、日本国内でも話題になりましたが研究不正の問題に対応するためにも研究ノートは重要です。研究が実際に行われたかどうかの証拠の1 つになるからです。もちろん、実験の条件やその成否を検討するためにも必要な基礎情報となっています。

(3)「見える化」の手順

調べ学習を通じて得られた情報は「可視化=見える化」され、活用されるのです。このような見える化の方法に関してはここ数十年でさまざまなものが開発されてきました。

情報の可視化=見える化とその蓄積という観点でいえば、1969 年に梅棹忠夫が『知的生産』(岩波新書)で示した京大式カード等、情報カードの発想が手頃なものでしょう。

情報カードはA6・A7 等比較的小さな紙にさまざまな情報を記録しストックする方法です。1 枚が1 つの情報になるように作られ、そのカードを見返したり、カテゴリー化して整理したりする等すれば、カードの整理=情報の整理となるわけです。

現在では1 枚1 枚カードを作るというのは作業効率がよいとはいえません。その場合は次のような作業をパソコン上で行うとよいでしょう。

情報カードの作り方(一例)

①ワープロソフトで基本カードの作成…Microsoft Office のWord のようなワープロソフトを使い、A6 ないしはA5 程度の大きさになるようなページを作成します。これを「情報カード」とします。

②情報カードに情報のコピー&ペースト…1ページに1つの情報となるようにウェブページや書籍、論文から引用したものを書き込んでいきます。書き込む際は「引用」と「自分がそこから読み取ったこと」を別にしておきます。

③情報の出典等を書き込む…「引用」と「自分がそこから読み取ったこと」を書き込んだら、ページの下にその情報がどこからのものか、ウェブページなら「URL・サイトのタイトルとどの機関・人物のウェブサイトであるのか、最終閲覧日」、書籍なら「著者名(出版年)『タイトル』出版社名」、論文なら「著者名(出版年)『論文タイトル』掲載雑誌名、巻数、収録ページ」を記入します。

④カードのタイトルを付ける…最後にページの一番上にカードのタイトルと作成者の氏名、作成日を書き込みます。

⑤カードの印刷…調べてきた情報を共有したり指導を受けたりするときはこのカードデータを印刷して持参します

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