調べ学習の発表会をしよう-スライド式ポスターを作る―シリーズ【アクティブ・ラーニングから探究的な学習へ】19

調べ学習の発表会をしよう-スライド式ポスターを作る―シリーズ【アクティブ・ラーニングから探究的な学習へ】19

*本連載は、がもうりょうた氏の『「探究」カリキュラム・デザインブック』(ヴィッセン出版)、『探究実践ガイドブック』(七猫社)を再編したものです。『「探究」カリキュラム・デザインブック』に関してはヴィッセン出版より掲載の許可を得ております。ページの下に両著作をお求めやすい特別価格で販売する七猫社の​会員限定ショップへのご案内があります

(1)発表形態とクラスでの運用

調べ学習のポスターができたら、発表大会を行います。一連の探究の流れ(調べ学習→仮説生成→仮説検証)を考えれば、中間発表にあたるものになります。

ここで改めて、発表の形態について簡単に説明します。

まず、ポスターセッション(ポスター発表)です。これは発表者が自分の作ったポスターの前に立って聴き手にポスターの内容を説明、聴き手がポスターや説明の内容について随時、質疑応答を行う方法です。この発表形態では、発表者と聴き手との交流は比較的フレキシブルで双方向的なものです。つまり、発表者がポスターの内容を説明している際に聴き手がそれを遮って質問をしたり、発表者が聴き手の様子に従って発表時間を変化させたりできるのです。

他方の口頭発表はよりフォーマルな発表形態になります。ここでは発表者はスライドを大きな画面に映し出したり、手元資料としてレジュメを配布したりして、決められた時間内で一方通行で発表を行い、発表が終わった後で聴き手と質疑応答を行います。

昨今の高校探究の現場ではポスターセッションが盛んに行われており、ここでの発表会もポスターセッションを基調に行うものと考えておきます。

ポスターセッションでは時間設定や空間設定、ヒトの配置が重要になってきます。たとえば、20 人のクラスであれば一度に10 人が同時に発表すれば、授業の前半と後半で20 人全員が発表することもできます。ただ、10 人が発表すると聴き手も10人になりますから、1 人の発表に聴き手が1 人と、少し寂しい印象のものになります。こういう場合は2 回の授業に分けて、今日は10 人が前半5 人後半5 人で発表を行う、次回は残りの10 人が前半5 人後半5 人で発表を行うというタイムスケジュールと役割分担にするとよいでしょう。これなら、発表者5 人に対して15 人の聴き手が

存在することになり、等分に割り振れば、発表者1 人当たり2 ~ 3 人が聴き手となります。

口頭発表なら1 回の発表で10 人が発表するとして、50 分授業なら5 分ずつの発表時間になります。他方のポスターセッションなら、50 分授業を前半後半で分けるなら単純計算で1 人25 分程度、発表ができます。聴き手の人数は少なくなるものの、発表の回数や時間を確保することができるのです。

ただし、クラス人数が少ない場合はポスターセッションよりも口頭発表のほうが適切です。10 人のクラスであるなら報告会を2 回行えば1 回の発表につき50 分授業中に5 人ずつで10 分程度の発表時間が確保できます。スライド式のポスターなら口頭発表にもプレゼンテーション用スライドとしてそのまま流用できます。ただ、口頭発表ではどうしても聴き手に当事者意識が薄れてしまいます。口頭発表中、各人が質問を3 つ以上プリントに書き込むようにする等の制約を設けるとよいでしょう。

(2)教室でできるポスターセッション

ポスターセッションでは発表者は複数のA4 スライドポスターやA0 版ポスター1 枚を壁やポスター台に貼り付けて発表を行います。ポスターパネルは1 台数万円するもので非常に高価です。壁や黒板にポスターを貼り付けるのもよいですが、やはり、ポスターパネルを利用すると本格的なものになります。

ここでは簡易的なポスターパネルとして段ボールパネルを紹介します。段ボールパネルは加工用の板状のものであり、A0 版ポスターを1 枚に貼り付けられる大きさのものです(たとえば、900 × 1800mm 程度)。段ボールパネルは安価であり、だいたい、50 枚で3 万円程度の価格です。持ち運びも簡単で、転倒してもケガをすることはありません。ただ、自立性が確保できませんので机や椅子にもたれかけさせて利用することになります。紙ですので水に弱いのですが、大切に使えば数年間は使用可能です。

段ボールパネルの場合は机や椅子にもたれかけさせるため、裏表を使うことができません。この点は市販の自立式のポスターパネルと違うところです。

(3)発表会の段取りについて

さて、発表会当日の段取りについてです。まず、授業を発表ターン(前半後半等)で分け、発表を配分します。

人数が多い場合は1つの授業を3 つに分ける方法もありますが、一定の発表時間が必要ですので前半と後半の2 分割で学習者を配分するとよいでしょう。

前半の組は授業開始前に段ボールパネルにピンを使って自分たちのポスターを貼って行きます。

授業開始とともに、後半発表・別授業発表組は観客となり、前半発表組のポスターの前に集まります。この際、どのポスターを見るかは自由にする方法があります。また、どの順番で見るのか事前に決める方法もあります。最初はどこかのポスターで話を聞き、2 枚目からは自由という方法もあります。

発表者は「開始」の合図とともにポスターを上から順々に説明していきます。聴き手はそれを遮って質問をしてもよいですし、「もっと短く」のような要望を出してもよいでしょう。

この段階では、ポスターセッションについて学習者の大半はなじみがないと思われます。この時点での指導として重要なのは、ポスターに自分たちの調べ学習の成果を貼り付け、クラスメイトに発表し質問を受ける1 連の流れを経験させることなのです。前半の大体25 分で発表は2 ~ 3 回程度行えると考えられます。

1 回の発表時間の目安は10 分程度とガイダンスするとよいでしょう。7 ~ 8 分程度のポスター発表とともに2 ~ 3 分程度の質疑応答が理想です。おそらく、初学者はうまく質問ができないと思います。事前の説明で聴き手は必ず質問しなくてはいけないことを決まりとして提示する必要があります。そしてできればポスターセッション中に受けた質問と行った回答については発表者自身が書き留めておくように指導するとよいでしょう。

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