調べ学習と探究的な学習をつなげるために―シリーズ【アクティブ・ラーニングから探究的な学習へ】9

調べ学習と探究的な学習をつなげるために―シリーズ【アクティブ・ラーニングから探究的な学習へ】9

*本連載は、がもうりょうた氏の『「探究」カリキュラム・デザインブック』(ヴィッセン出版)、『探究実践ガイドブック』(七猫社)を再編したものです。『「探究」カリキュラム・デザインブック』に関してはヴィッセン出版より掲載の許可を得ております。ページの下に両著作をお求めやすい特別価格で販売する七猫社の​会員限定ショップへのご案内があります

(1)2つの学びをつなげる

ここまで理想的な探究的な学習(探究)の構造を考えてきました。

探究(課題研究)へと至る3つのステップ―シリーズ【アクティブ・ラーニングから探究的な学習へ】8

このような理想を実施するうえで目指すところは、やはり、「課題検証」。つまり、大学の先生や企業の研究者が行なうような問題解決なのですが、勢い勇んで提案しても、「うちの学校には実験装置も実験を指導できる人間もいないよ」と一蹴されることがほとんどでしょう。

先進的な取り組みを行なう学校のように、最初から高度な課題検証的な課題研究ができるというのは難易度が高いのです。できる範囲で、できる限りで行なうことになるのですが、教育系の学会や研究会で発表されるのは見栄えのよい高度な実践報告ばかりです。新参教師への道標はなかなかありません。

これまでの連載で課題研究に向けたカリキュラム設計を説明してきましたが、その前に調べたことをまとめる学習活動である「調べ学習」から始めたいという方もいらっしゃるでしょう。その方たちのためにどのように「調べ学習」を「探究的な学習」に連結するのか、ご提案します。

(2)「 調べ学習」の陥りやすい失敗

探究の理想として、「仮説」を作り出し、それを検証する「課題研究」を中心としたカリキュラムが存在するとしましょう。その段階に至るまでの導入しやすい学習方法に「調べ学習」、調査した内容をポスターやレポートにまとめるという取り組みがあります。これは小学校や中学校でも行なわれているものです。

この調べ学習で陥りがちな失敗はまさに「調べたものを貼っただけ」という状況です。

有名進学校の探究発表会でこのようなポスターがずらりと並んだ光景に遭遇したことがあります。地域の河川について調べたポスターがあったのですがインターネットで拾った情報のコピー&ペーストで作られており、最後の「考察」には「生活排水を直接流さないようにしたい」とだけしか書かれていませんでした。

(3)自ら考える「考察」、そして、「仮説」作りへ

このような「何も考えていないことが明らかな学習」は、文部科学省の言う「深い学び」の対岸にある、まさに「浅い学び」の典型です。

これを回避するためには「考察」を重視し学習者の「深い学び」を促します。たとえ、適当に調べた情報であっても、学習者たちにはなんらかの関心や疑問があったはずです。その関心や疑問に沿った、自分たちなりの「考察」が厚く書かれているか、検討します。

指導方法としては、調べ学習の中間発表会等で、「なぜ、この内容を調べたのか」、「この内容にはどのような価値があるのか」と関心や疑問がクリアになるような問いをぶつけ、「調べて何が分かったのか」、「何を考えたのか」と考察を促す問いで学習者を追い込むとよいでしょう。

さらに翻って、このような問いを念頭にした単元初期からの指導が重要になります。事前に中間発表会等でこのような問いをぶつけると知らせ、想定問答集のようなものを作らせるとよいかもしれません。

こうすれば、調べ学習は単なる「調べ物」から調べた材料で「自ら考える」機会となるのです。

自ら考える「考察」を発展させれば、おのずから探究の「仮説」作りへとつながっていきます。前章でも述べたように「課題設定」や「仮説」作りは難しい取り組みです。調べ学習を極めれば、このような探究のある種の「肝」を学ぶことにつながるのです。

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