教師に求められる2つの力―シリーズ【アクティブ・ラーニングから探究的な学習へ】4

教師に求められる2つの力―シリーズ【アクティブ・ラーニングから探究的な学習へ】4

*本連載は、がもうりょうた氏の『「探究」カリキュラム・デザインブック』(ヴィッセン出版)、『探究実践ガイドブック』(七猫社)を再編したものです。『「探究」カリキュラム・デザインブック』に関してはヴィッセン出版より掲載の許可を得ております。ページの下に両著作をお求めやすい特別価格で販売する七猫社の​会員限定ショップへのご案内があります

(1)教師に必要な力

「アクティブ・ラーニング=主体的・対話的で深い学び」を授業で実現するために、教師に必要な2つの力があります。

1つは授業を「デザイン」する力です。従来、授業を作るというと教師がどのようにしゃべって、黒板にどう板書して授業を進めるのかということが中心になっていました。しかし、アクティブ・ラーニング型の授業では学習者がその時間、何をどのような手順でどこまでするのかということをデザインしなくてはいけません。つまり、学習者の台本を作る必要があるのです。

もう1つ大切な力は、学習者がデザインされた授業のなかで活動に取り組んで体験を深めているか、観察しながら、適宜「ファシリテーション」するという能力です。

(2)「 デザイン」は論理と想像力を使って

アクティブ・ラーニング型授業をデザインすることは学習者の台本作りです。このとき、重要なのは学習者になりきって、自分の描いた台本を何度もイメージすることが大切です。

対象となる学習者がどのような知識を事前に持っていて、どのような関心を抱いているのか。授業のなかでどのような感情の動きや興味関心の変化を体験することになるのか。

これらの変化は教師によってもたらされるのではなくて、学習者自身がその授業内で行なう活動や体験によって生じるものです。

この体験をすれば学習者はこのように感じるだろう、このような考えを起こすだろうと「想像」をしながらで授業を作っていきます。

一方で授業=学習者の台本は、後で示す学習目標、学習内容、評価など、ロジカルな授業デザインの骨組みを使って作っていく論理的なものでもあるのです。

(3)「 ファシリテーション」とは何か

授業をいくらうまく「デザイン」したからといって、本当に学習者が思ったように動いてくれて、こちらが期待したことを感じ考えてくれるかというと、そう簡単にはいきません。

教室中の雰囲気やグループでの関係性、活動との相性や興味・関心、これまで培ってきた知識や技術の個人間の違い、このようなことが原因になって学習活動がうまくいかないことがあります。

学習者によってはグループでの活動において不適応反応が生じる場合もあります。たとえば、会話をまったくしなかったり、机にうつ伏せになって眠ったりするということもままあります。あるいは議論をする場面において無関係なことで、はしゃいでしまうということもあるでしょう。

「ファシリテーション」というのは、授業やワークにおいて期待される活動や学びを促進するものです。しかし、それは学習者にその活動をするように怒ったり、なだめすかしたりするということではありません。学習者の既存の興味関心や知識に合わせてヒントを出したり、ときには活動の内容や課題を変更したり、自然なかたちで行なうのです。

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