はじめの一歩としてのテーマ選び―シリーズ【アクティブ・ラーニングから探究的な学習へ】12

はじめの一歩としてのテーマ選び―シリーズ【アクティブ・ラーニングから探究的な学習へ】12

*本連載は、がもうりょうた氏の『「探究」カリキュラム・デザインブック』(ヴィッセン出版)、『探究実践ガイドブック』(七猫社)を再編したものです。『「探究」カリキュラム・デザインブック』に関してはヴィッセン出版より掲載の許可を得ております。ページの下に両著作をお求めやすい特別価格で販売する七猫社の​会員限定ショップへのご案内があります

(1)「課題設定」のためのプロセス

調べ学習、そして探究で重要になるのは「課題設定」です。学習者がどのような探究を行うのか、決めるはじめの一歩にあたります。

この課題設定が、なかなか難しいとの声が聞こえます。「探究をしましょう」、「課題研究をしましょう」と言っても、学習者のなかで探究、課題研究のイメージがなければどのようなテーマがよいのかわからずに困ってしまいます。ある程度の枠組み(たとえば、『生物』に関するテーマ等)を教師が与えたとしても、関連する知識がなければ年齢と不釣り合いな幼い問いや課題が出てきます。

このためか、昨今では「課題設定」のためのワークショップや教材が開発され、さまざまなアプローチがなされるのですが、満足のできるアプローチは多くはありません。それは一気呵成に「課題設定」を行おうとするため、「テーマ」や「課題」、「仮説」、「問い」、それぞれを作るプロセスを踏んでいないからだろうと考えられます。

「課題設定」は、まず、学習者の興味関心に合わせた対象、テーマを見つけることから始まります。このテーマに関しての「調べ学習」を行い、知識を蓄えることで、そのテーマ周辺の「課題」が浮き彫りになっていきます。そこから「問い」が生まれ、対応する「仮説」ができあがっていく。このようなプロセスを、順を追って行うのが重要です。

(2)テーマの「大きさ」がポイント

 「課題設定」の、そして、「調べ学習」のはじめの一歩となるのは学習者が「調べたい」と思う対象、テーマを選ぶ作業です。学校や学年の学習目標によってはこのテーマが一定の縛りをもつ場合があります。たとえば、アメリカへの修学旅行と関連した探究を行うなら、「アメリカ」に関連したテーマを学習者は選ぶことになります。たとえば、「アメリカの映画」や「アメリカの宗教」等です。

一方で学習者にテーマを自由に選んでもらうこともできます。

ともにポイントになることはテーマの「大きさ」です。大きさとはテーマについて調べ学習をする際の範囲の広さであり、そのテーマに関連した情報量を指しています。たとえば、「アメリカの映画」と「ヒッチコック監督の作品」では前者のほうがテーマとして大きいです。調べる範囲は広く、集めるべき情報量は多くなるでしょう。対して後者はかぎられた範囲でかぎられた情報量を集めればよくなります。

だからといって、「テーマの大きさが小さいほうがよい」、というわけではありません。「『アメリカの映画』を調べる」という学習者は途中から調べる範囲の広さに圧倒されるでしょうから、「テーマを絞る」ことになるでしょうし、教師もいずれそのような指導を行うことになります。一方で「『ヒッチコック監督の作品』を調べる」という学習者はかぎられた範囲での調査なので比較的やりやすいのですが、視野を広げ議論を広げるためには「ヒッチコック作品」に関連する情報(別の監督の作品や発表された時代背景等)にあたる必要が出てきます。

このように後々の指導において選んだテーマの大きさが影響することに注意しておきましょう。

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